Azure Virtual Desktop(AVD)とは?Windows 365との違いも解説
リモートワークの普及により、従業員がどこからでも安全に業務を行えるよう仮想デスクトップ環境を構築するニーズが増えています。
Azure Virtual Desktop(AVD)は、Microsoftが提供する仮想デスクトップサービスです。しかし、2021年に発表されたWindows 365との違いがいまいちわからないという方も多いのではないでしょうか。 この記事ではAVDの概要からWindows 365との違い、ユースケースまで詳しく解説します。
この記事の目次
Azure Virtual Desktop(AVD)とは
Azure Virtual Desktop(以下、AVD)とは、Microsoftが2019年から提供する仮想デスクトップ(VDI=Virtual Desktop Infrastructure)サービスです。VDIのなかでも、仮想デスクトップをクラウドサービスとして提供するDaaS(Desktop as a Service)の一種です。
通常VDI環境を構築するには、多額の初期費用や専門知識、リードタイムが必要になります。しかしAVDはクラウドプラットフォームMicrosoft Azure(以下、Azure)上で提供されるサービスのため、比較的低コストかつ手軽に環境を構築できることが特徴です。
AVDの特長とメリット
AVDの具体的な特長とメリットは次のとおりです。
構築・運用負荷の軽減
通常VDI環境を自社で構築するには、仮想マシンのほかにもゲートウェイやブローカーといった複数の管理コンポーネントすべてを用意しなければなりません。
一方でAVDなら、これらの管理コンポーネントがAzureのサービスとして提供されます。ユーザがインフラを用意したりメンテナンスしたりする必要がないため、構築・運用負荷を大幅に軽減することができます。
Windows10/11のマルチセッションが可能
AVDはWindows10/11のマルチセッションが可能な唯一のサービスです。マルチセッションとは、1台の仮想マシンに対して複数のユーザーが同時にアクセスできる機能のことを指します。
通常は1台の仮想マシンに対して1人のユーザーしかアクセスできないため、人数分の仮想マシンを用意する必要があります。しかしAVDのマルチセッションを利用すれば、大人数が利用する環境でも仮想マシンの台数を抑えられ、コスト削減につながります。
Microsoft製品とのシームレスな統合
たとえばMicrosoft 365は、ライセンスをすでに持っている場合、AVD上でも追加料金なしで利用できます。機能の制限もないため、ローカル環境と同じように使用できることがメリットです。またパフォーマンスが最適化されているため、AVD上での作業も快適かつ効率的に行えます。
柔軟なカスタマイズ性
AVDは自社の環境に合わせた柔軟なカスタマイズが可能です。たとえば仮想マシンのサイズや性能、特定のアプリケーションの配布、セキュリティポリシーの適用などを自由に設定できます。自社のポリシーや用途に応じて柔軟な設定ができることも大きなメリットです。
AVDとWindows 365の違い
AVDと同じくMicrosoftが提供するDaaSの1つにWindows 365があります。ここでは、AVDとWindows 365の違いについて詳しく解説します。
Windows 365とは
Windows 365とは、Microsoftが2021年から提供するクラウドPCサービスのことです。AVDは自由にカスタマイズしたVDI環境を構築できるサービスだとしたら、Windows 365は予め決められたスペックのデスクトップを利用するDaaSです。
Windows 365はOSやストレージ、CPUなどのリソースは予め設定されており、必要なライセンスを購入してスペックを選択すれば、すぐに利用を開始できることが特長です。
仮想PCのスペックはBasic・Standard・Premiumの3種類、ライセンスの種類は中小規模の組織向けのWindows 365 Businessプラン、大規模な組織向けのWindows 365 Enterpriseプランの2種類が用意されています。
AVDとWindows 365の違い
AVDとWindows 365の大きく異なるポイントは次のとおりです。
セッション方式
AVDはマルチセッション方式も選択できるのに対し、Windows 365はシングルセッション方式です。Windows 365は1つのWindows環境を1人の利用者が占有します。そのため、利用者が多い場合はWindows 365の方がランニングコストが高価になる可能性があります。
料金体系
AVDはライセンスの費用に加え、使用したAzureのリソースの分だけ料金が発生する従量課金制であるのに対し、Windows 365は月額固定制です。AVDの場合はコストが予測しにくい反面、必要な分だけ使用することで無駄なく最適化を図ることもできます。
カスタマイズ性
AVDは自社の環境に合わせた柔軟なカスタマイズが可能です。一方でWindows 365は導入や設定の手間を可能な限り省いて容易に導入できるよう設計されています。そのため、ユーザーがカスタマイズできる範囲はAVDよりも少なくなります。
ほかの項目も含めて表にまとめると次のとおりです。
AVD | Windows 365 Business | Windows 365 Enterprise | |
セッション方式 | マルチセッション | シングルセッション | シングルセッション |
料金体系 | 従量課金制 | 月額固定制 | 月額固定制 |
カスタマイズ性 | ◎ | △ | ◯ |
ユーザー数 | 無制限 | 最大300人 | 無制限 |
Azureサブスクリプション | 必要 | 不要 | 必要 |
Windows 365ライセンス | 不要 | 必要 | 必要 |
Windows 10/11 Enterpriseライセンス | 必要 | 不要 | 必要 |
Microsoft 365ライセンス | 任意 | 不要 | 必要 |
Microsoft Entra ID(旧Azure AD )参加 | ◯ | × | ◯ |
Microsoft Entra ID(旧Azure AD )とAD同期 | 任意 | 不要 | 必須 |
AVDのユースケース
Windows 365はできるだけ簡単にVDIを導入し、管理・運用の手間を省きたい企業に最適です。一方でAVDには次のようなユースケースがあります。
大規模な組織でのコスト最適化
Windows10/11のマルチセッションを利用することで、利用者数よりも仮想マシンの台数を少なくできます。AVDは仮想マシンの稼働時間に応じて料金が発生するため、利用者数が多い場合でもコストの最適化が可能です。
細かな要件への対応
特定のタスクやアプリケーションに必要なリソースを割り当てパフォーマンスの最適化を行うといった独自のカスタマイズや、高度なセキュリティポリシーを適用する必要がある場合は、設定の自由度が高いAVDが適しています。
複数地域にまたがるVDI環境の構築
ユーザーが世界中の異なる地域に分散していて異なるリージョンを使用したい場合、AVDなら仮想マシンを地理的に分散した仮想ネットワークへ接続させることができます。
まとめ
AVDはMicrosoftが提供するDaaSで、手軽にVDI環境を構築でき、リモートワークにおける利便性の向上やセキュリティの強化を実現します。同じくDaaSであるWindows 365とはセッション方式や料金体系などに違いがあり、大規模な組織でのコスト最適化や細かな要件の適用を実施したい場合はAVDの方が適しているでしょう。それぞれの特長を理解したうえで、自社に最適なDaaSの導入を検討されてみてはいかがでしょうか。