クライアント証明書とは? 仕組みや利用シーンをわかりやすく解説
クライアント証明書は、ユーザやデバイスがサーバーに対して自分の身元を証明するためのデジタル証明書です。インターネット上での安全な通信を確立し、不正アクセスを防ぐために使用されます。多くの人にとって、クライアント証明書は聞き慣れない言葉かもしれませんが、実は日常的に使用されるWebサービスの背後に隠れています。
本記事では、クライアント証明書の基本的な概念や仕組み、メリット、利用シーン、導入方法ついて、初心者にも分かりやすく解説していきます。
この記事の目次
クライアント証明書とは?
クライアント証明書とは、ユーザやデバイスが自身の正当性を証明するための電子証明書のことです。PCやスマートフォン、タブレットなどのクライアントデバイスにインストールし、アクセス先となるサーバーに提示することで正規のユーザであることを認証します。
サーバー証明書との違い
クライアント証明書と似た言葉にサーバー証明書(SSL/TLS証明書)があります。サーバー証明書は、サーバーにインストールし、Webサイトの信頼性とSSL暗号化通信が実装されていることを証明します。WebブラウザがHTTPSで通信するために必須のものであり、サーバー証明書が本物であるか確認することで、そのWebサイトがそのドメインの正当な所有者のものであること、そしてそのWebサイトとの通信が盗聴されていないことが保証されます。
サーバー証明書がサーバーの正当性や安全性を証明するものであるのに対し、クライアント証明書はアクセスするユーザの正当性を証明するものです。SSLサーバー証明書とクライアント証明書を組み合わせることで、より強固なセキュリティを確保できます。
クライアント証明書の必要性
クライアント証明書が必要となる背景は、セキュリティと認証の強化にあります。近年DXの推進やリモートワークの普及により、利便性や働き方の柔軟性が向上する反面、サイバー攻撃などのセキュリティリスクも増しています。利便性を維持しつつ、セキュリティを強化するため、社内システムへのアクセス元となる個人のデバイスを正しく認証できるクライアント証明書が求められているのです。
クライアント証明書の仕組み
ユーザは使用するデバイスにクライアント証明書をインストールし、サーバー側ではクライアント証明書をもつデバイスのみアクセスを許可する設定をしておきます。
そのうえで、ユーザは各種サーバーやクラウドサービスなどへアクセスする際に、クライアント証明書を提示します。サーバーはクライアント証明書の有効性を確認し、問題がなければアクセスを許可するのです。
一方で、クライアント証明書がインストールされていない、もしくは不正である場合はすべてのアクセスをブロックします。これにより正当なユーザのみがアクセスできるため、セキュリティを強化することが可能です。
クライアント証明書を導入するメリット
クライアント証明書を導入することで、次のようなメリットが期待できます。
情報漏えいリスクの低減
従来のID・パスワードによる認証は、パスワードが推測されやすい脆弱なものであった場合や漏洩してしまった場合に、容易に不正アクセスされてしまうリスクがあります。また、複数のシステムで同じパスワードを使い回していると、どこかでパスワードが漏洩してしまった際の被害は大きくなります。
一方でクライアント証明書による認証システムは、クライアント証明書がインストールされていないデバイスからのアクセスはすべてブロックできます。そのため、万が一ID・パスワードが流出した場合でも情報漏えいリスクを低減できるのです。
リモートアクセスの安全性確保
社外から業務を行う場合でも、クライアント証明書がインストールされた業務用端末からのアクセスだけを許可することができます。そのため、安全性が確保されていないプライベートデバイスから、従業員が勝手に社内システムに接続するリスクを回避できます。
利便性の向上
クライアント証明書がインストールされているデバイスであれば、ID・パスワードの入力を省略してシステムやサービスにアクセスさせることも可能です。複数のシステムを利用する場合でもそれぞれID・パスワードを管理する必要がなくなるため、利便性が向上します。またID・パスワードの管理が不要になることで、パスワードの使い回しリスクも防ぐことができます。
クライアント証明書の利用シーン
クライアント証明書は主に次のようなシーンで活用されます。
二要素認証の導入
クライアント証明書は、二要素認証の一部として利用されることが多くあります。クライアント証明書をインストールすればIDとパスワードでの認証を省略することもできますが、ID・パスワードとクライアント証明書を併用することで認証のセキュリティレベルを大幅に向上させることが可能です。
BYODのセキュリティ強化
BYOD(Bring Your Own Device=私用端末を業務で利用すること)は、セキュリティ面で懸念が多いです。しかし、クライアント証明書がインストールされたデバイスのみを許可することで、事前に許可したデバイス以外からのアクセスをブロックできるため、リスクを低減できます。
デバイス紛失時の対策
デバイスそのものを紛失したり、盗難にあったりした場合は、管理者がクライアント証明書を無効にすることができます。これによりデバイスを紛失した場合でも、悪意のある第三者からの社内システムへのアクセスを遮断し、不正利用や情報漏えいのリスクを低減することが可能です。
クライアント証明書の導入方法
クライアント証明書を取得するには、サーバー証明書と同様に認証局(CA:Certificate Authority)に申請を行う必要があります。認証局とは、電子証明書の発行・管理を行う第三者機関です。認証局が企業の信頼性を確認すると、証明書が発行されます。
クライアント証明書を受け取ったら、社内のユーザに配布しましょう。ユーザは、配布された証明書を使用するデバイスにそれぞれインストールします。これらの一連の作業を自動化できるシステムやツールも存在するため、効率化のために導入することもおすすめです。
VDI化でクライアント証明書にお悩みなら
クライアント証明書を導入している環境をVDI化したいが、一般的なDaaSやVDI環境ではクライアント証明書が正常に動作せずお困りのことはないでしょうか。
at+linkのリモートPCサービスであれば、クライアント証明書も問題なくインストールすることが可能です。リモートPCサービスは、DaaSやVDIと違い、仮想環境ではなく物理PCでリモートデスクトップ環境を提供することが特長です。物理PCを利用者1人ひとりに割り当てる形態のため、仮想化によるアプリケーションの制約や性能のデメリットをなくし、高い自由度とパフォーマンスを実現しています。
1台・1ヶ月から利用できるため、手軽なスモールスタートが可能です。VDI化に伴うクライアント証明書の課題があれば、リモートPCサービスを試してみてはいかがでしょうか?
まとめ
クライアント証明書は、ユーザが使用するデバイスがサーバーに対して自身の正当性を証明するために使用される電子証明書です。サーバーにはクライアント証明書がインストールされたデバイスからのアクセスのみを許可する設定を行うことで、セキュリティを強化できます。
不正アクセスによる被害が増加している今、自社のシステムを保護するためにクライアント証明書の導入を検討してみてはいかがでしょうか。